紙ヒコーキ

年下攻め若干多めのBL小説サイトです。毎週日・火・木曜日更新です。現在は大学生モノを連載中ですが、今後は軍事モノにも手を出す予定・・・。耽美な雰囲気と文章力向上をめざし日々精進です。

Rick's Daily 002

 

「クライヴ、すいません。手加減してあげられそうにない」
「ああ」
むしろそれでいいと言わんばかりの瞳でクライヴがエヴァンの瞳を見つめてくる。エヴァンはその視線を受け止めると少し荒っぽく、クライヴをベッドに座らせた。
そのままベッドに手をついてクライヴに中腰のまま優しく口付ける。クライヴが口を僅かに開いたところから、舌を侵入させた。


「クライヴ、もう少し、…口開けて」
息継ぎの間に、かすれたエヴァンの声が聞こえる。クライヴは怯えるようなしぐさで少しずつ口を開いた。
エヴァンが隣に座ると同時にすっとセーターの裾があげられて、そのままエヴァンの骨張った手が肌に触れた。クライヴの顔が熱くなる。


「身体が冷たい。温めてあげないと」
やっと唇を離したエヴァンが、いたずらっ子のような瞳で笑う。クライヴはその手に、瞳に、翻弄されるような気になった。くすぐったいような、気持ちいいような、クライヴの性感帯を確実に探ってくるその手が憎たらしい。


「クライヴ、どうしたんです?感じてるんですか?」
「違う…!」
首筋にキスを落としながらエヴァンが笑う。一回りも違う年下に、こうも簡単に乱されてしまう自分が悔しい。


「そこは強がるところじゃない。ほら、…素直になって下さい」
クライヴの素肌に手を伸ばしたエヴァンは、そっとその厚い胸板を撫でる。
エヴァン、…」
クライヴの赤らんだ目尻にキスを落として、クライヴの頭を庇いながらゆっくりと押し倒した。そして素早くその胸元をまさぐる。それに気付いたクライヴが慌ててその腕を捉えた。


「クライヴ、手を離して」
「…」
「仕方ないな」
エヴァンは自分のズボンからベルトを引き抜くとそれでクライヴの手首を束ねた。


「少し大人しくしてて下さい?」
クライヴはよく最中に暴れる。暴れると手が付けられない。
束ねた手首をクライヴの頭の上で固定して、もう片方の手でクライヴのバックルを外す。眼差しで訴えるクライヴに優しく激しい口づけで答えてやると、クライヴが甘い息を漏らした。


「こっちは正直ですね。きちんとオレの手に反応してくれてる」
ズボン越しに触れてもわかる緊張感。エヴァンは意地悪そうに口角を上げると軽く唇にキスを落としたあとその手で上下に優しくこする。


「…あぁ、…」
クライヴの瞳が次第に欲望に溺れていく。それを優越感に似た気持ちで見下ろしてエヴァンは上下運動を早めた。
「ダメだ、エヴァン…!」
身体をくねらせてその手から逃れようとするも、エヴァンの手はそれを逃がさない。
クライヴは押し寄せる快感に、身を任せてしまわぬように最後の理性で自分を止めた。


「いいんですよ、素直になって」
張り詰めた先から蜜がこぼれる。それをエヴァンは指ですくって塗りつけた。それを潤滑油にして敏感なところを優しく細い人差し指がさする。クライヴの身体が反応して一瞬強張った。


「気持ちいいですか?」
余裕な顔をした部下は自分の弱いところを隙間なく攻めてくる。仕事と変わらぬ要領と手際のよさで効率的かつ効果的に。
クライヴは眉間にしわを寄せ唇を噛み締めて、その刺激に声が漏れそうなのを堪えた。


「声も聞かせて下さいよ」
そういって口に舌をねじ込んでくる。開いてしまった唇からは甘い吐息と声が漏れ出した。


「や、めろ…エヴァン…」
「どうして?あんたがオレで感じてくれてるんだ、聞かなきゃ損でしょう」
そういいながら一層慣れた手つきでクライヴの敏感な部分を攻め立てる。クライヴはもう限界を感じて瞳をぎゅっと閉じた。その途端、せわしなく動いていた手がぴたりと止まる。


「続けて欲しいですか?」
「…あ、…」
直前で止められて、もどかしく、欲望が押し寄せる。けれど、続けて欲しいと素直に言えない。
笑いながら見下ろしてくるエヴァンを、抵抗するようにクライヴが睨んだ。


「そんな潤んだ目で睨まれても。あなただけ先にいかせたりはしませんよ」
そういってエヴァンは自分のズボンを下ろした。ゆっくり、それをクライヴへ近付ける。そして、まぐわる。


「…クライヴ、力抜いて。きつい」
少しさっきより余裕がなくなったエヴァンの表情に、クライヴは余裕のないままではあるが先ほどよりも幸せな気分に浸った。


「動いても、いいですか?」
エヴァンの言葉に、クライヴが頷く。
そしてゆっくりと奥まで差し込むと、クライヴの口から思わず掠れた息が漏れた。少しずつ、エヴァンの腰の動きがスピードを増す。


「そんな顔しても、やめませんよ」
エヴァン…好きだ…」
「オレもです。セックスだって、こんなに相性がいい」
エヴァンはそういうと、今まで休めていた手を胸板に這わせクライヴの性感帯に触れた。クライヴの感度がいっきに上昇する。


エヴァン、…ダメ、だ…おかしくなりそうだ…!」
吐息と切ない声が混じる。身体をよじらせて激しすぎる刺激から逃れようとしても、エヴァンの身体がそれを許さないというようにぴったりとクライヴの身体に沿わされる。


「なって下さいよ、…上等だ」
その言葉とともに動きが激しくなって、二人同時に果てた。

「あいつのにおいは、消えましたか?」
「…ああ。お前でいっぱいだ」
クライヴの目尻が垂れる。幸せな気持ちのときはいつもこうだ。
「オレ、いつも冷静でいられる自信があったんです。たとえあなたが別れ話を持ち出しても」
「そんなことはしない」
「…例えばの話ですよ。それなのにこんなことで冷静さを欠いてたら、とても別れ話をされたときに冷静でいられませんね」
クライヴは黙って聞いていた。エヴァンがクライヴのとなりに転がる。


「もうオレ、冷静でいようなんて思いません。大人ぶったりもしない。もう隠しきれないんだ、あなたに対する感情を。…だから、そんなオレでも、受け入れてくれませんか」
「今更俺が、お前を嫌いになると思うのか?いいか、俺は諦めが悪くてしつこいんだ。お前が何と言おうと別れてやる気なんてさらさらないし、同じ墓に入ってもらうつもりだ。…覚悟しておけ」
「オレは、オレが死ぬまであなたを死なせたりはしませんよ」
どちらも引かない空気に、思わず目を合わせて笑った。
永遠なんて言わないから、死ぬまでそばにいて欲しいと強く思う。


「リック連れて来ます。一緒に寝るって約束したから」
「あいつも一緒の墓に入ってもらおうか、三人じゃ狭いかな」
クライヴの声を背中に受けながら、エヴァンは幸せを噛み締めていた。

 

 

 

作:yukino