アイデンティティを刻む
「あまり銃声も聞こえませんね」「まだ互いの様子を探っているんじゃないか?」ナイトビジョンを装着しながらウィルが囁く。ナイトビジョンであれば暗闇でも敵がいれば白く浮き上がって見えるが、それもない。レイフも裸眼であたりを伺っているようだ。「ウ…
ウィルフレッドの所属する陸軍の全日射撃訓練は初秋に行われる。防弾チョッキやヘルメット、夜間の射撃に備えてナイトビジョンスコープを取り付けたM16やFN FALライフルなど実際の装備と地図を持たされ、バディと共に林間に放り出される演習訓練である。弾は…
――――「本日このような合同訓練の機会を与えて下さったレイフ・ベックフォード隊長に感謝して、挨拶の締めとさせて頂こう」 陸軍中部支部長の挨拶が終わり、合同訓練の時間が近づくにつれて一層訓練生たちの熱気が上がっていく。ウィルはそれを肌で感じて、自…
発表の後、最初は妬みから陰口を言う者もあったが毎日のようにレイフがウィルの部屋にやってきて自主練に誘ったり色んな話をしに来るのでそれもそのうち減っていった。「ウィル、今日もこのあと個人訓練?」「ああ」「お前はこの合同訓練が終わったら今より…