2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧
"率直に言うと、気持ちの整理がついていないときのほうが楽だった。落ち着いて自分の余計な気持ちを片付けてみると、こんなにもピアーズが恋しい。" 久しぶりに日記を綴ろうと思ってしまったのは、きっと報われない恋の副作用だ。クレイグはソファに腰掛けて…
久しぶりの二人での食事を終えると、フレディは立ち上がってコーヒーを入れた。今日は少し疲れているようだから、柔らかめのカフェオレにしよう。マグカップを用意していると不意に後ろから腕を回された。 「フレディ、ありがとう。すごく美味しかったよ」 …
”ピアーズへ この手紙が届く頃には、ヨーロッパから帰ってきているでしょうか。 俺がこの先、第二のライフステージを過ごすことになるドイツは、お前のそのプランに含まれていたかな。俺はこれから、親父の学んだ大学に通うことになる。留学という名目だが…
翌朝は思っていたよりすっきりと起きられた。眩しい朝の光がウィルを照らす。冬の朝陽は弱く、温度も低い。ウィルは布団から出るとそのまま歯を磨いて顔を洗った。もう頭の中で今日一日のプランを考えている。 午前中に買い物を済ませてそれから支部でトレー…
それからは物事がスムーズに進むようになった。訓練もエリオットが言うようにあれからすぐに慣れてきて、レイフにも褒められるようになった。 「今日、隊長に褒めてもらえたよ。最近調子いいなって」「よかったじゃない」「…セシリーのおかげだ」 そういって…
「ウィル!遅いぞ!!」「ハイ!」 陸軍の訓練時代は得意としていた基礎訓練も、S-SATの中では全く歯が立たなかった。入隊してから一ヶ月が経とうとしているのに。 「もっと早く!そんなんじゃ敵に追いつかれる!」「ハイ!」 後ろからレイフが発破をかける…
※「アイデンティティーを刻む」の続きです 「今日からトロイア支部、レグルスに所属されることになったウィルフレッドだ。自己紹介を、ウィル」「ハイ。元陸軍特殊部隊第一小隊所属、本日からS-STAトロイア支部レグルスに入隊しましたウィルフレッド・ブラッ…
呼び出したはいいものの、何をしたらいいのかわからない。なんと言えばいいかも正直考えたけどいい言葉が思いつかなかった。ただ、ブレントのあんな言葉を聞いたらいても立ってもいられなくなったんだ。 シャワールームから引き上げると、脱衣所にはダニエル…
大学が長い春休みに入り、ピアーズは一層建築学の勉強に力を入れることにした。春休みのうちに色んな建築を見、歴史を知り、自分らしい意匠設計にたどり着くための材料を得たい。クレイグが自分を認めてくれている、信じてくれている、そう思うと苦手な構造…
「あのさ、ブレント」 後ろから急に声を掛けられて、自分でも情けないくらい肩が震えた。ゆっくり振り返ると、オレが待ち焦がれていた顔。 「…キャプテン、びっくりしましたよ」「ああすまない」 キャプテンは少し気難しい顔をしていた。まあ、それはそうだ…
ロッカールームからはチームメイトの賑やかな声が聞こえてくる。その中にブレントもいるようだ。同僚といるときのブレントは明るく愉快で、戦場で見る厳しい表情のブレントとは全くイメージが違う。まあそんなギャップに惚れたのだけど。 「訓練だりー。暑い…
同じ飲み会に出たのは久しぶりだった。まだ片思いだった頃に一度、ベネットが来るからというので仕事そっちのけで直行したのもいい思い出だ。課の皆の顔が上気して赤くなり始めている。今日は早めに仕事を終わらせると言っていたのに、アイツはなにをやって…
「あまり銃声も聞こえませんね」「まだ互いの様子を探っているんじゃないか?」ナイトビジョンを装着しながらウィルが囁く。ナイトビジョンであれば暗闇でも敵がいれば白く浮き上がって見えるが、それもない。レイフも裸眼であたりを伺っているようだ。「ウ…