切ない
アダムといるときの月はより一層綺麗に見える。本当に苦しい毎日の闘いの中でも、こんな夜を過ごせるなら長く続いてもいいと思えるのだ。そよ風に草木が揺れ、乾いた音が二人を包んだ。「いい夜ですね」「…そうだな」二人は夜間警備に当たっていた。部隊の仲…
"率直に言うと、気持ちの整理がついていないときのほうが楽だった。落ち着いて自分の余計な気持ちを片付けてみると、こんなにもピアーズが恋しい。" 久しぶりに日記を綴ろうと思ってしまったのは、きっと報われない恋の副作用だ。クレイグはソファに腰掛けて…
”ピアーズへ この手紙が届く頃には、ヨーロッパから帰ってきているでしょうか。 俺がこの先、第二のライフステージを過ごすことになるドイツは、お前のそのプランに含まれていたかな。俺はこれから、親父の学んだ大学に通うことになる。留学という名目だが…
同じ飲み会に出たのは久しぶりだった。まだ片思いだった頃に一度、ベネットが来るからというので仕事そっちのけで直行したのもいい思い出だ。課の皆の顔が上気して赤くなり始めている。今日は早めに仕事を終わらせると言っていたのに、アイツはなにをやって…
思い通りに行かない恋愛がこんなに辛いものだとは思わなかった。自分にとって恋愛は人生に不可欠な要素ではなかったし、ましてそれ中心に生きてきたわけではない。喩えるならば、テレビゲームのような時間潰し、娯楽だった。だからうまくいかないならやめれ…
久しぶりの休日なのに、コリンは早々にどこかへ出掛けてしまった。今日は晴れているし、気温もそこまで高くない。出掛けるにはちょうどいいだろう。フレッドも外へ出ることにした。歯を磨いて顔を洗う。コリンと兼用で使う洗顔料はミントの香りがして気持ち…