2015-01-01から1年間の記事一覧
ーーー 一度だけ過去に、クレイグと肌を重ねたことがあった。あれは高校の時、同じくこの部屋でだった。あの日もこんな風に、積もらない雪が降っていたのを覚えている。 ”なぁピアーズ、いまから俺んち来れないか?” 突然かかってきた電話に、ピアーズはひと…
「それで?俺を引き止めた理由って?」「…前も言っただろ?察してくれよ」「ま、そうだよな」 クレイグは持ってきたコーヒーのマグをコンラッドに手渡して自分ももう一つのマグに口をつけた。 「で?その不毛な恋がなんだって?」「…お前に、あいつに代わっ…
「おー!会いたかったぜー!」「おつかれさん」「Hey!ピアーズ!久しぶりだな!」 待ち合わせの体育館にやってきたのはピアーズとクレイグのクラスメイトであるエルバート、コンラッド、ユージンだ。エルバートはいつも明るくムードメーカー。コンラッドは…
春は夜明け。夏は夜。秋は夕暮れ。冬は早朝。日本の昔の詩人がそんな風に”一日の最もいい時間”を表現していると教えてくれたのはクレイグだった。だが、夕暮れが美しいのは、秋だけではないとピアーズは思う。 ピアーズはマフラーに顔を埋めて空を見上げた。…
久しぶりの休日なのに、コリンは早々にどこかへ出掛けてしまった。今日は晴れているし、気温もそこまで高くない。出掛けるにはちょうどいいだろう。フレッドも外へ出ることにした。歯を磨いて顔を洗う。コリンと兼用で使う洗顔料はミントの香りがして気持ち…
思い通りに行かない恋愛がこんなに辛いものだとは思わなかった。自分にとって恋愛は人生に不可欠な要素ではなかったし、ましてそれ中心に生きてきたわけではない。喩えるならば、テレビゲームのような時間潰し、娯楽だった。だからうまくいかないならやめれ…
部屋には少し気だるげな空気が漂っていた。シリルは腰にタオルを巻いただけの状態でベランダに出て涼んでいる。ダグラスのマンションからは一級河川が見え、その奥にはニューヨークの街並みも見下ろせるからシリルはお気に入りだった。 夜風が汗ばんだ肌を撫…
発表の後、最初は妬みから陰口を言う者もあったが毎日のようにレイフがウィルの部屋にやってきて自主練に誘ったり色んな話をしに来るのでそれもそのうち減っていった。「ウィル、今日もこのあと個人訓練?」「ああ」「お前はこの合同訓練が終わったら今より…
―――クライヴはすごい雨の音で目が覚めた。カーテンを開けて外を見る。窓の外は真っ暗で、朝6時とは思えない。窓を叩く横殴りの雨が激しい音を立てている。 昨日からこの地域に低気圧が流れ込み豪雨になると昨夜のニュースで言っていた。乱暴な雨のアラームの…
「クライヴ、すいません。手加減してあげられそうにない」「ああ」むしろそれでいいと言わんばかりの瞳でクライヴがエヴァンの瞳を見つめてくる。エヴァンはその視線を受け止めると少し荒っぽく、クライヴをベッドに座らせた。そのままベッドに手をついてク…
ボクのご主人は2人います。ひとりはエヴァンさん!幼いころに死にそうになっていたボクを拾ってくれた命の恩人です。そしてもうひとりはエヴァンさんの恋人のクライヴさんです。2人はとっても仲良しで、いつも隣同士にいます。 エヴァンさんはクライヴさんが…